承継者のいない無縁墓(無縁仏)は、寺院や霊園にとって大きな課題です。
本記事では、無縁墓が放置されることによる問題点、お墓の墓じまいと改葬の基本手続き、費用や期間の目安を説明していきます。
寺院にも経営感覚が重要な時代。無縁墓対策が寺院に及ぼす影響は大きいですね。
1. 無縁墓とは
無縁墓とは、承継者や縁故者がいなくなり、供養や管理がされなくなったお墓のことです。
墓地埋葬法や自治体の条例に基づき、公告・通知を経て正式に「無縁墓」と認定されます。
正式名称は無縁墳墓です。
なお、縁故者はいるけれども対応してもらえなくて荒れ果てている場合はすぐに無縁墓とはならない点に注意が必要です。
2. なぜ無縁墓が問題なのか
- 管理負担:檀家不在の墓でも寺院が清掃・安全管理を担う必要があり、境内墓地全体の維持コストが増す。
- 景観・安全性の低下:放置墓は草木や墓石の倒壊リスクを生み、墓地全体の景観を損なう。
- 経営面の影響:管理料や布施が途絶え、寺院経営に長期的な影響を与える。
- 防災・防犯上の懸念:荒廃した墓地は不法投棄や動物被害の温床となり、災害時には倒壊の危険性もある。昨今北陸富山でも大きな地震があり倒壊した墓の映像がニュースで流れていました。
- 無縁墓はこれからの問題:放置すればどんどん増える可能性がある
3. 無縁墓の墓じまい(改葬)の流れ
事前調査は必須です。
持ち主がいる墓は荒れ果てていてもすぐには無縁墓として扱えないからです。
墓地管理台帳等から使用者調査を行います。住所不明の場合は関係先自治体に戸籍等を調査が必要になります。住所が判明すれば必要な住所変更や使用者変更をしてもらいますが、墓地使用権放棄の方が良いケースもあります。
相続が進むと相続人が増えてどうにもならなくなってしまうので、数年お参りに来ていないお墓に対しては確認をした方が良いでしょう。
以下、調査でも使用者や縁故者の生死、住所が分からない場合に無縁墓改葬の手続きに進みます。
- 公告・通知:過去の名簿や関係者を調査し、一定期間(多くは1年以上)公告を行う。
- 無縁墓の確定:縁故者が現れなければ、市町村に無縁墓として届け出る。
- 改葬許可申請:墓地埋葬法第5条に基づき、市町村長の許可を得て遺骨を移す。
- 遺骨の受け入れ先決定:合同墓・永代供養墓・納骨堂など、寺院や霊園が管理可能な場所へ移す。
- 墓石撤去・整地:石材店に依頼し、墓石を撤去して更地に戻す。
なお、無縁墓改葬の手続きはあくまでも行政法上の手続きですので、使用権を剥奪するものではありません。その為、現実的にはすぐに合祀りしたり墓石を処分することはトラブルになるため一定期間は保管しておくことが必要です。
トラブルの際は民法上の法律関係には変化が無いため民事上の不法行為責任からは逃れられないです。
最近は祭祀継承者を寺院に指定することで一定の条件が満たされた場合には合祀への承諾書を契約書でもらう事も有効な対策となっております。
墓地や納骨堂販売時の契約書のチェックにも少子高齢化の視点は必要で、継承を願いつつ、継承が途絶える事を念頭に置いた関わりが重要となっています
費用も時間もかかりますが、問題の先送りは更に問題を深くするため注意を要します。
4. 必要書類と行政書士の関与
改葬に必要な書類は以下の通りです
・死亡者の本籍や氏名、使用者に関わる書類
・無縁墓の写真と配置図
・公告を実施した旨(官報、立て札等)と申し出が無かった旨を示す書類
・他市町村が必要とする書類 等
墓地埋葬法施行規則に手続きの定めがあります。
行政書士法第1条の2により、これらを有償で作成・提出代行できるのは行政書士のみです。
寺院や石材店が「報酬を得て」代行することはできません。
行政書士が関わることで、公告から改葬許可まで法令遵守を徹底し、トラブルを未然に防ぐことができます。
5. 費用の目安
- 墓石撤去・整地費用:1基あたり10万~30万円程度(規模や立地条件による)。
- 行政書士報酬:調査費用実費、難易度に応じて1基10万円~
- 公告費用:新聞公告の場合は数万円。
6. 期間の目安
無縁墓の改葬は、公告期間(約1年)+行政手続き(1~2か月)+墓石撤去・移転(1~2か月)を要します。
全体で1年半以上を見込むのが一般的です。
7. 行政書士が関わるメリット
- 法令遵守:公告・改葬許可申請を適正に行い、寺院のリスクを軽減
- 業務負担の軽減:複数基の無縁墓対応も効率的に進められる。
- 説明責任の補強:「専門家が関与している」という事実が、檀信徒や地域に安心感を与える。
- 終活全般への広がり:相続・死後事務など、墓じまい以外の終活課題にも一括対応可能。
まとめ
無縁墓は、管理・安全・経営・文化の面で寺院や地域にとって大きな課題です。
無縁墓は法律上、その撤去には費用も時間も責任も伴います。
お寺の販売する商品やサービスは長期にわたる制度設計が必要であるため契約書チェックなどのアドバイスも行っております。
富山県内で無縁墓整理や改葬を検討されている寺院様には、これからの予防策と併せて少子高齢化や地方の人口減少に向き合っていくことをおすすめいたします。
【対応エリア】
富山県全域(富山市・高岡市・射水市・魚津市・黒部市・滑川市・砺波市・南砺市・氷見市・小矢部市・ 上市町・立山町・入善町・朝日町)に対応しております。
上記以外の地域の方も、まずはお気軽にご相談ください。
今日もご縁に感謝!