看護師・社会福祉士・精神保健福祉士として、20年近く医療福祉現場で患者さんやご家族の“もしも”に寄り添ってきた経験から、
今は行政書士として終活のサポートをしています。
実は稀少なエキスパートです💪
今日は「尊厳死宣言書の問題点」を、現場経験をふまえてお話しします。
1.尊厳死宣言書には法的拘束力がない
尊厳死宣言書の最大の問題点は、「法的拘束力がない」ということです。
たとえ公正証書で作成していても、100%書面どおりの意思が実現されるとは限りません。
医師の9割以上が「尊厳死宣言書がある場合、本人の意思を尊重する」との調査もありますが、それでも法的には強制力がありません(2回目)
本人が意識不明のとき、生死を分ける医療処置をするかどうかを決めるのは他者です。
現場では、
医師が治療方針を提案し、
家族や身元引受人が承諾する
この流れで「延命治療」が行われるケースがほとんどです。
つまり、たとえ尊厳死宣言書があっても、他者の意向が優先されてしまう場合がある、
これが一つ目の大きな問題です。
2.せっかく作っても、見つからなければ意味がない
公正証書で作った尊厳死宣言書も、万が一のときに見つからなければ無力です。
どこに保管しておくのか?
いざという時に誰が見つけて読むのか?
これを考えておかないと、存在していても「存在しない」のと同じです。
たとえば…
かかりつけの病院にコピーを提出しておく
マイナンバーカードや免許証に「尊厳死宣言書あり」と明記しておく
信頼できる人に伝えておく
こうした発見性の工夫がないと、せっかくの書面が役に立ちません。
実際に、「貸金庫に入れたまま、相続のときに発見された」なんて悲しい事例もあります。
それでは遅すぎるのです…。
3.自分で作った尊厳死宣言書は現場を困らせる
「私、延命治療は受けません」
──よく見かける一文です。気持ちは分かります。けれど、現場は困ります。
「延命治療」とは何を指すのか?
気管挿管?
人工呼吸器?
点滴や栄養チューブ?
どこからどこまでが“延命”なのか、線引きが曖昧なままでは、
現場の医療者は法的・倫理的な責任を問われることもあるのです。
なので、責任回避のため出来ることをします。やらないという選択肢は選びません。
特に急性期病院は。
しかも、ご家族が「お父さんを助けてください!」と懇願する場合も少なくありません。
尊厳死宣言書があるからといって、様式が整っていないと大混乱(;゚ロ゚)
──これが現場のリアルです。
4.尊厳死宣言書を語る行政書士の現場理解の浅さ
私が行政書士になって最もやりたかったのが、この「尊厳死宣言書のサポート」でした。
でもセミナーに行くと、
「作成は簡単!営業しやすい!報酬にもなる!」
と話す“第一人者”もいます。
けれど私には、寝たきりの方を一度も見たことがない人が、ターミナル期の意思決定を語ることに違和感しかありませんでした。
最低でも、介護医療院や特養で1か月ボランティアしてから語ってほしい。
試しに「寝たきり」で画像検索してみてください。
お布団に横になっているだけの優しいイメージが出てきますよね?でも、実際は…
手足は拘縮し
顎は上がり
骨はもろく
自分の唾液で誤嚥性肺炎になる
それが寝たきりのリアルです。
そんな世界を知らない人が、「尊厳死宣言書は儲かる」なんて語ってほしくない。
5.「延命治療」って、どこまでのこと?
例えば──
食べられなくなった → 経管栄養
呼吸ができなくなった → 気管挿管や気管切開
腎臓が機能しない → 人工透析
これ、全部“延命”の一種です。でも、他にもまだまだあります。
いまや「寿命」という概念が曖昧になっている。
だからこそ、尊厳死の選択は慎重に、丁寧に。
簡単に「オススメできますよ」とは絶対に言えません。
尊厳死宣言書を作りたい人、作成を担う専門職双方とも延命治療とはなんぞやの理解や
共通認識が浅いまま走り出しても尊厳死宣言書自体は出来てしまうのが問題点です。
6.まとめ:それでも尊厳死宣言書は備えになる
尊厳死宣言書は、信頼できる専門職とよく話し合いながら作ること
作成後は、発見される仕組みを整えること
尊厳死宣言書には課題も多い。
けれどそれでも、自分自身を守る強い備えになるのです。
行政書士でも看護師、社会福祉士、ケアマネジャーなどの医療福祉系資格者は
実際の臨床を経験していますので、相談者として適しているかと思います。
(少なくとも実習は必須ですので)
らいちょう先生も
富山で尊厳死宣言書を作成するエキスパートになるために日々研鑽しています。
他にも現場のリアルが詰まった尊厳死宣言書のあれこれを書いています。
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