自筆証書遺言のメリット・デメリット

終活

世の中の人は遺言というと、自筆証書遺言のイメージなんでしょうねぇ。

医療福祉現場で20年、今は行政書士になって終活サポートをしています。
高齢になってくると、割と「遺言でも書いとくか」という声を聞きます。

でも、専門職の見地から見ると遺言って奥深いんですよ。
無効になってしまったり、争いの種になってしまったり。

遺言について、エキスパートの立場から簡単に説明していきます。

✅ 自筆証書遺言のメリット

作成コストが安い

  • 必要なのは紙、ペン、印鑑のみ。公証役場に行く必要もなく、作成費用を最小限にできる。
    保管制度を利用しなければ正直0円。
    保管制度を利用しても5000円でおつりが来る。
  • 特に財産額が少ない人や「遺言は残したいが費用をかけたくない」という方に向く。

時間・場所を選ばず作れる

  • 自宅や病室など、体調や環境に合わせて作成可能。
  • 外出が難しい高齢者や入院中の方にも適している。

内容を他人に知られず作れる(秘匿性)

  • 公証人や証人に見せる必要がないため、内容を完全に秘密にできる。
  • 「特定の相続人だけに多く残す」などセンシティブな内容でも書き残せる。
    (実現されるかは謎。争いになると内容や様式不備で無効になることもある)

簡単に書き直せる柔軟性

  • 他人に頼らないので自分で書けばいいので、書き直しのハードルは低い。

作成キットなどがあり、心理的なハードルが低い

  • 書店に行くと2000円程度で遺言書作成キットが販売されている。
    習い事感覚で購入する人が多いとの事。

法務局保管制度を利用すれば死亡時に指定者に通知される

  • 2020年7月開始の制度で、全国の法務局で保管可能。
  • 検認不要になるため、相続開始後の手続きがスムーズ。

⚠ 自筆証書遺言のデメリット

形式不備による無効化リスク

民法上の要件を欠くと全体または一部が無効。

  • 例:「令和5年5月吉日」→日付特定不可で無効
  • 押印がない→全体が無効
  • 添付の財産目録を自筆していない(法改正前は不可/現行は目録はパソコン可だが署名押印が必要)

そのほか、紙や余白にも指定があります。
遺言自体、内容にも書くべき事・書かない方が良い事もあります。
家族法の知識が無いと、内容によってはモメます。(遺留分侵害や認知など)

自分の思いをとりあえず書いてみようという面ではいいのですが、
遺言は書くことが目的では無く 実行される事 が目的なので意味の無い遺言を作ってしまうことに。

あと、自筆なので、字が書けないとつくれません。
間違った場合の訂正方法が独特なので適当に2本線で直しておけばいいみたいな感覚ではダメ。

発見されない・隠匿される可能性

  • 自宅保管だと、相続人が存在を知らずに遺産分割をしてしまうケースがある。
  • 不利な内容の相続人が故意に破棄・隠匿する恐れもある。

改ざん・差し替えの危険性

  • 手書きのため筆跡偽造や差し替えが物理的に可能。
  • 法務局保管制度を使えば改ざん・差し替えは防げる。

検認手続きが必要(法務局保管を除く)

  • 相続人が家庭裁判所に検認申立をし、期日を待つ必要がある。
  • 平均1~2か月かかるため、遺産分割や預金解約が遅れる原因になる。
  • うっかり開封してしまい無効になってしまったり

内容不備による遺産分割トラブル

  • 財産の特定が不十分(例:「○○銀行の口座」だけでは特定できない場合あり)。
  • 条件や期限が不明確(例:「長男が結婚したら渡す」などは解釈が分かれる)。
  • 誤字脱字・曖昧表現で相続人間の解釈が割れることが多い。
  • 字が汚くて読めない(これ、高齢者であるあるです)

調査を行わないまま作成されることが多い

  • 現存しない財産や評価額が大きく変わった財産を記載し、実行困難になる。
  • 相続人の範囲を調べなかったため、遺留分などに配慮せず作成してしまい実行困難になる

高齢者や認知症の人は能力要件で争われやすい

  • 作成時に意思能力がなかったと相続人が主張し、無効訴訟になるケースあり。
  • 筆跡が違うなどともめて筆跡鑑定に発展。もはや火曜サスペンス劇場

自筆証書遺言はおすすめできないのか

遺言って何のために書くんでしょう?

もし、自分の気持ちを整理しておきたいからという理由だけであればエンディングノートと自筆証書遺言(法務局保管もしない)でもいいと思います。

でも、残される人に気持ちや財産をバトンタッチしたい。感謝を伝えたいという気持ちがあるのであれば、有効で実行可能な遺言を作って欲しいと思います。

お気軽にできると宣伝されていますが、実は一人で作るのはとても大変です。
専門職の立場からアドバイスするとほとんどの場合は公正証書遺言という先生が多いです。

看護師×行政書士から見た自筆証書遺言

らいちょう先生は臨床現場が長く高齢者と接してきたエキスパート。
法律家なら公正証書遺言1択と言いたい所ですが、、、

法律・制度と人間の気持ちの間には、意外に壁があったりするんです(T-T)

・まず、気持ちの整理に書いてみるには自筆証書遺言でもいい
 年齢が上がったり、病気になった際に公正証書にステップアップする人もいる
・おひとり様には自筆証書遺言はすすめられない(実行困難が高確率で予見できる)
・遺言書作成キットは玉石混淆なのでおすすめしない
・専門職のセミナーや個別指導を受けて作ると良い
・法務局での保管はマスト(形式不備をチェックしてくれるし紛失しないので)
・法務局でも一般の人向けにセミナーをやっているが一般高齢者にはちょっと難しいかも
余命告知など時間との闘いになる場合は公正証書遺言と併走させる

まとめ

自筆証書遺言も使い方によっては人生を守る武器になります
簡単と言われている自筆証書遺言の書き方ですが、結構難しいです。
(書いている時に自分では気づけないのがタチが悪い)

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